「元気回復行動プラン」を「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン」と訳すべき理由

1. 「WRAP」の原意と翻訳の課題

WRAP(Wellness Recovery Action Plan)は、メアリー・エレン・コープランドによって開発されたセルフヘルプのためのプランであり、精神的・身体的なウェルネスを促進することを目的としています。

日本語では「元気回復行動プラン」と訳されていますが、「元気」という言葉が持つニュアンスがWRAPの本来の意味と完全に一致しているかどうかには議論の余地があります。


2. 「元気」という言葉の違和感

(1) 「元気」の意味の幅広さと曖昧さ

「元気」という言葉は、日本語において非常に広い意味を持ちます。例えば:

  • 日常会話での使用:「元気ですか?」「元気を出して」など、軽い挨拶や励ましの言葉として使われる
  • 健康の意味:「病気が治って元気になった」「体調が元気な状態」
  • 精神的な活力:「今日はやる気があって元気だ」「元気いっぱいの子供」

このように、「元気」は身体的・精神的な健康、エネルギー、ポジティブな気持ちなど、多様な意味を含んでいます。そのため、「元気回復行動プラン」という訳では、WRAPの持つ包括的なウェルネスの概念を正確に表現できていない可能性があります。


(2) 精神的なリカバリーを明確に表現しづらい

WRAPは、精神的なウェルネスや自己管理に重点を置いたプランです。しかし、日本語の「元気」には「病気からの回復」というニュアンスが強く、「精神的なリカバリー」という概念が伝わりにくい場合があります。

例えば:

  • 「元気回復行動プラン」という名称から、「うつ病や精神的な不調からのリカバリー」に限定されたプログラムのように感じる人もいる
  • 精神疾患の当事者にとって、「元気になりなさい」という表現がプレッシャーになることがある

一方で、「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン(WRAP)」と訳すことで、より中立的かつ包括的な表現となり、精神的な回復だけでなく、自己成長や予防の観点も含めることができる。


3. 「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン」が適切な理由

(1) 「ウェルネス(Wellness)」が持つ包括的な意味

「ウェルネス」は、単なる健康状態だけでなく、身体的・精神的・社会的なバランスを重視した、より良い生活を目指す考え方を指します。

  • WRAPは、単なる「病気の回復」ではなく、生活全体の質を向上させることを目的としているため、「ウェルネス」という言葉の方が適切。
  • 「元気」よりも、「ウェルネス」の方が精神的な側面も含めたウェルネスの維持を明確に伝えられる。

(2) 「リカバリー(Recovery)」が持つ専門的な意味

WRAPの概念における「リカバリー」とは、単に病気が治ることではなく、自分らしく生きることを取り戻すプロセスを意味します。

  • 精神的な回復や自己成長にフォーカスしたWRAPの趣旨に合致する。
  • 「元気回復」よりも、「ウェルネスリカバリー」の方が適切な言葉。

(3) 「アクション・プラン(Action Plan)」が持つ実践的な意味

WRAPは、単なる理論や考え方ではなく、具体的な行動計画(アクション・プラン)を立てることを重視するプログラムです。

  • 「行動プラン」という訳語は正しいが、「元気回復」という前提が不要。
  • 「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン」にすることで、個人が主体的に行動することが明確に伝わる。

4. まとめ:「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン」への変更のメリット

✅ 「元気」という言葉の曖昧さを回避できる

  • 身体的な健康だけでなく、精神的・社会的な側面を含めた広い意味での「ウェルネス」を明確に表現できる。
  • 「元気にならなければならない」という誤解を生みにくい。

✅ 「リカバリー」が持つ本来の意味を尊重できる

  • 単なる「回復」ではなく、「自分らしく生きるプロセス」としてのリカバリーの概念を正確に伝えられる。

✅ 「アクション・プラン」との整合性が取れる

  • WRAPの実践的な側面を強調し、「計画を立て、行動する」ことを明確に示せる。

結論:日本語訳を「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン」に変更することの妥当性

「元気回復行動プラン」よりも、「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン(WRAP)」と訳した方が、原意を正確に伝え、誤解を生みにくい。

  • 「元気」という言葉の持つ多義的な意味を避けることができる。
  • 精神的・社会的なリカバリーの概念を明確に伝えられる。
  • WRAPの実践的な性質をより明確に表現できる。

このような理由から、日本語訳を「ウェルネス・リカバリー・アクション・プラン」とすることは、より適切な選択肢と考えます。

東京WRAPの個人的な見解です。

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