クライシスと主体性

クライシスになったとしても、主体性が完全になくなるわけではない。むしろ、どのように支え合うかによって、主体性を取り戻す機会にもなり得る。

クライシス時の主体性の変化

クライシスの最中、人は恐怖や混乱、圧倒される感覚に陥ることがある。そうなると、一時的に自分の意思決定が難しくなったり、周囲に頼ることが増えたりするかもしれない。しかし、これは「主体性を失った」というより、「主体性を発揮しにくくなっている」状態と考えられる。

具体例

① パニック発作が起きたとき

ある人が突然のパニック発作に襲われ、呼吸が荒くなり、何をすればいいのか分からなくなる。周囲の人が「落ち着いて」「深呼吸して」と言っても、それすら難しいかもしれない。この瞬間、その人は「どうするか」を自分で決める余裕がなくなっているように見える。

しかし、発作が落ち着いた後、「どんな環境だと発作が起きにくいか?」を一緒に考えることができれば、その人の主体性は回復していく。「次に同じ状況になったら、こう対応しよう」と決めるプロセスは、主体性を取り戻す大事なステップになる。

② 生活が崩れそうなとき

仕事や家庭のストレスが重なり、「何もかも無理だ」と感じた人が、家事や仕事に手がつかなくなってしまったとする。この状態では、「自分で決めて動く」という感覚が鈍くなり、周囲に指示されたり助けられたりしないと何もできないように見えることもある。

でも、たとえば「どんなサポートがあれば少し動けるか?」を一緒に考えたり、「まずコーヒーを飲む」「5分だけ片付ける」といった小さな選択をサポートすると、主体性を少しずつ取り戻せることがある。

クライシス時に主体性を取り戻すために

  • 安全なつながりを作る(まず「一人じゃない」と感じること)
  • 小さな選択肢を提示する(大きな決断ではなく、小さな「できそうなこと」から)
  • 何がその人にとって大切かを一緒に考える(価値観や希望を見失わないように)

クライシスの瞬間に主体性が弱まることはあっても、それが完全に消えるわけではない。むしろ、その後の関わり方によって、主体性を回復しやすくなるし、新しい視点を見つけることもできるかもしれない。

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