リカバリーにおける「尊重(Respect)」の再定義
― 丁寧に扱うことと、支配しないこと ―
「尊重しているつもり」が管理になるとき
日本の支援現場では、
「尊重しています」という言葉がよく使われる。
- 本人の意向を尊重している
- 丁寧に説明している
- 強制はしていない
けれど当事者から見ると、
丁寧だけれど、断れない
説明はあるけれど、選べない
という体験が少なくない。
尊重が、
礼儀正しい管理に変わってしまうことがある。
日本の現場で起きやすい「尊重の形骸化」
日本では、尊重が次のように誤解されやすい。
- 感情を荒らげないこと
- 空気を乱さないこと
- 指示に従うこと
- 波風を立てないこと
その結果、
- 違和感や怒りは「未熟」
- 反論は「攻撃的」
- 拒否は「協力的でない」
と扱われ、
尊重は「従順さ」と結びついてしまう。
リカバリーの視点で捉え直す「尊重」
リカバリーにおける尊重とは、
好ましい態度を取る人を評価することではない。
それは、
- 嫌だと言えること
- 合わないと感じること
- 支援を断ぶ選択をすること
- 感情が揺れること
が、
人として当然の反応として扱われることである。
尊重とは、
当事者を「落ち着かせる」ことではなく、
当事者の主体を侵さないことである。
尊重と同意の関係(日本で特に大切な点)
日本の現場では、
- 説明した=同意した
- 反対しなかった=納得した
と受け取られやすい。
しかしリカバリーの視点では、
- 同意はいつでも撤回できる
- 沈黙は同意ではない
- 迷いながらの同意もある
と考える。
尊重とは、
一度の同意で固定しないことであり、
途中で変わる気持ちを認めることである。
日本の現場で起きやすい「尊重による抑圧」
尊重が形だけになると、
次のような抑圧が生まれる。
- 「尊重しているのに不満が出る」
- 「説明したのに納得していない」
- 「権利は守っている」
その結果、
不満を言うあなたが問題
という構図が作られる。
これは尊重ではなく、
責任の押し戻しである。
支援者・制度に求められる尊重の姿勢
リカバリーにおける尊重を実践するには、
支援者や制度に次の姿勢が求められる。
- 当事者の拒否を「関係の終わり」にしない
- 違和感を「修正対象」にしない
- 説明責任を果たし続ける
- 決定を急がせない
- 「本人のため」という言葉を疑う
尊重とは、
当事者の選択が、支援者の想定を外れても続く態度である。
尊重とリカバリーの深い関係
リカバリーが進むとは、
「良い態度」を身につけることではない。
それは、
- 自分の感覚を信じ直す
- NOと言っても関係が壊れないと知る
- 説明しなくても尊重される経験を重ねる
そうした中で、
自分が人として扱われているという感覚を取り戻すこと。
尊重は、
リカバリーの結果ではなく、
リカバリーが始まる条件である。
まとめ(⑧の結論)
リカバリーにおける「尊重」とは、
丁寧に扱うことではなく、
当事者の主体に踏み込まないこと。
そして、踏み込んでしまったときに、
引き返せること。
である。
尊重が失われたとき、
支援はどれほど優しく見えても、
管理や抑圧に変わってしまう。
だからこそ、
尊重は態度や言葉遣いではなく、
関係のあり方そのものとして
問い続けられる必要がある。
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