もしも、これからが「最初の会話」だとしたら

では、ここからは、もしも今日が、誰かとの全く新しい「最初の会話」だとしたら、どんな時間になるか、二人組で少しだけ体験してみませんか?

今日の目的は、何か特別な技術を身につけることではありません。 ある方が、「相手は自分のことを理解しようとしながら聞いてくれている、と思えるだけで、すごく安心できた。言葉でうまく埋められなくても、『この人はわかろうとしてくれている』って感じられて、沈黙の時間さえも心地よかった」と話してくれました。

お互いの中に、その「わかろうとする気持ち」を大切にしながら、ただ、そこに一緒にいる時間を味わってみましょう。


【二人組での対話の時間】(30分)

やりかた:

  1. 二人一組になります。
  2. まず、どちらが話し手で、どちらが聞き手になるかを決めます。(15分経ったら交代します)
  3. テーマ:「あなたの人生で、人とのつながりが『心地よい』と感じたのはどんな時でしたか?あるいは、もし『心地よい』つながりを誰かと作れるとしたら、それはどんな感じだと思いますか?」

聞き手の方へ:

  • 答えを探したり、うまく聞こうとしたりしなくて大丈夫です。ただ、好奇心をもって、話し手の世界を一緒に旅するような気持ちで、そばにいてみてください。
  • 相手の言葉、表情、沈黙…そのすべてを、急かさずに、ゆっくり味わってみましょう。もしかしたら、沈黙の中にこそ、豊かな何かが流れているのを感じられるかもしれません。

話し手の方へ:

  • 聞き手は、あなたの世界を大切に受け止めようとしてくれています。安心して、心に浮かぶことを、言葉を探しながら話してみてください。
  • うまく話せなくても、大丈夫。言葉にならない想いも、大切なあなたの一部です。

実際に私のワークショップ例を書きます。

(少しうつむき加減に、ぽつりぽつりと話してくれる相手に、体を少し傾けて、ゆったりと耳を傾けながら)

わたし: これまで、何か困ったことがあると、『問題があるのはいつも私の方だ』って感じていました。助けてくれる人は完璧で、私だけが150%ダメなんだって。だから、早く治してくださいって、相手に全部任せてしまっていたんです。

相手 そうだったんですね…。『助けてくれる人は完璧で、私だけが150%ダメなんだ』って、そう感じながら誰かと向き合うのって、すごく重たい気持ちになりますよね。話してくださって、ありがとうございます。

(少し間をおいて、自分のことを思い出すように、やさしい口調で)

相手: なんだか、昔の自分を見ているようです。私も、誰かに助けを求めるとき、「この人は私の知らない答えを全部知っているんだ」って、勝手に思い込んでいたことがありました。「私のダメなところを、どうかしてください」って、まるで魔法使いに頼むみたいに(笑)。

わたし: (少し顔を上げて、こちらを見る)…わかります。

相手: でも、そうやって相手に全部を委ねてしまうと、だんだん自分が空っぽになっていくような、不思議な感覚になりませんでしたか?まるで、自分の人生なのに、運転席に座っているのが自分じゃない、みたいな…。〇〇さんは、そんな風に感じたことはありますか?

相手: 空っぽ…。そうかもしれないです。楽なような、でも、どこか寂しいような…。

わたし: うんうん、そうですよね。「楽なような、でも寂しいような」、すごくよく分かります。その「完璧な人」に、自分の全部を分かってもらおうとすると、本当の自分から、どんどん離れていってしまうような感じがして。

(相手の目を見ながら、少し微笑んで)

相手: もしよかったら、ここでは、その「150%ダメな私」とか、「完璧な誰か」っていうのを、一旦ドアの外に置いてきませんか?

わたし: …え?

相手: ここには、ただ、〇〇さんと私がいるだけ。私も完璧じゃないし、迷ったり、間違えたりもします。だから、〇〇さんの運転席から〇〇さんを降ろして、私が代わりに運転する、なんてことはできません。

わたし: …。

相手: でも、助手席に乗って、「あ、今の道、すごく景色がきれいだったね」とか、「次の角、どっちに曲がったら面白そうかな?」なんて、一緒に話しながら旅をすることはできるかもしれないって思うんです。〇〇さんが運転する、〇〇さんの人生の旅の、隣に座る旅仲間、みたいな。

わたし: 旅仲間…。

相手: そうです。だから、「早く治してください」って言わなくても大丈夫。むしろ、〇〇さんがこれまで、その「150%ダメなんだ」っていう重たい荷物を抱えながら、どんな景色を見て、どんな風に道を歩いてきたのか、その話をぜひ聞かせてほしいんです。私にとっても、それはきっと新しい発見がある旅になると思うから。

わたし: …なんだか、そんな風に言われたのは、初めてです。

相手: ふふふ。そうかもしれませんね。どうでしょう、こんな風に、一緒に旅をする仲間として、少しお話ししてみませんか?

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