「Taking Action」ってなに?はじめての方へのやさしいガイド

はじめに

「メンタルヘルスのリカバリーって、何から始めればいいんだろう?」

そんな疑問を持っている方に、ぜひ知っていただきたいプログラムがあります。

Taking Action(テイキング・アクション) は、アメリカのSAMHSA(薬物乱用・精神保健管理庁)とメアリー・エレン・コープランド博士によって開発された、メンタルヘルスリカバリーのためのセルフヘルプ教育プログラムです。

このプログラムは、精神的な困難を経験した人々が、自分自身の力でリカバリーへの道を歩むためのツールと知識を提供してくれます。


リカバリーとは?

まず、「リカバリー」という言葉について確認しましょう。SAMHSAは次のように定義しています。

リカバリーとは、個人が自らの健康とウェルネスを改善し、自己決定的な生活を送り、自分の可能性を最大限に発揮しようと努める変化のプロセスです。

つまり、リカバリーは「病気が治ること」だけを意味するのではありません。たとえ症状があっても、自分らしい生活を取り戻し、希望を持って前に進んでいくプロセスなのです。

リカバリーを支える4つの柱

SAMHSAは、リカバリーを支える重要な4つの要素を示しています。

要素意味
健康(Health)症状を乗り越えたり管理したりしながら、心身の健康を支える選択をすること
住まい(Home)安定した安全な居場所があること
目的(Purpose)仕事、学校、ボランティア、創作活動など、意味のある日々の活動があること
コミュニティ(Community)サポート、友情、愛、希望を与えてくれる人間関係や社会的ネットワークがあること

リカバリーの10の指針

SAMHSAは、リカバリーには以下の10の原則があると示しています。これらは、回復の旅を歩む上で大切な道しるべとなります。

  1. 希望(Hope) — リカバリーは希望から始まります
  2. 本人主導(Person-Driven) — 自分自身がリカバリーの主役です
  3. 多様な道筋(Many Pathways) — リカバリーへの道は一つではありません
  4. 全人的(Holistic) — 心・体・精神のすべてを大切にします
  5. ピアサポート(Peer Support) — 同じ経験を持つ仲間との支え合いが力になります
  6. 関係性(Relational) — 人とのつながりがリカバリーを支えます
  7. 文化(Culture) — 自分の文化的背景を大切にします
  8. トラウマへの配慮(Addresses Trauma) — トラウマの影響を理解し対処します
  9. 強みと責任(Strengths/Responsibility) — 自分の強みを活かし、自分の人生に責任を持ちます
  10. 敬意(Respect) — 自分自身と他者への敬意を大切にします

Taking Actionプログラムの目標

このプログラムの目標はシンプルです。

自己決定とエンパワメントに焦点を当てたセルフヘルプのスキルと戦略を学び、ウェルネス、安定、リカバリーを達成できるようになること

難しそうに聞こえるかもしれませんが、要するに「自分で自分を助ける方法を学ぶ」ということです。


プログラムの構成:4つのモジュールと24セッション

Taking Actionは全24セッションで構成され、大きく4つのモジュール(学習テーマ)に分かれています。

モジュール1:基本概念(セッション1〜7)

リカバリーの基礎となる考え方を学びます。

セッションテーマ
1リカバリーへの導入
2自尊感情
3希望
4学びとリサーチ
5エンパワメントと自己決定
6セルフ・アドボカシー(自己権利擁護)
7強力なサポートシステムを築く

モジュール2:リカバリーのツール・スキル・戦略(セッション8〜14)

日々の生活で使える具体的なツールを学びます。

セッションテーマ
8個人・地域のリソースを評価する
9食事・運動・光・睡眠・喫煙
10リラクゼーション・気分転換・楽しみ
11つらい考え・気持ち・経験への対処
12ピアサポート・リカバリーミーティング・ピアカウンセリング
13医療とお薬
14ウェルネスツールリストの完成

モジュール3:アクションプランニング(セッション15〜19)

自分だけのリカバリー計画を作ります。

セッションテーマ
15予防とリカバリーのためのアクションプランを作る
16トリガー・注意サイン・困難な時期(深刻な乱れ)への対処計画
17事前指示書パート1
18事前指示書パート2
19危機後の計画とアクションプランの活用

モジュール4:ウェルネストピック(セッション20〜24)

日常生活でリカバリーを維持する方法を学びます。

セッションテーマ
20困難な人生の課題に取り組む
21就労
22障壁と課題を乗り越える
23リカバリーとウェルネスを支える生活スタイルを作る
24最終セッション:振り返り・モチベーション・お祝い

ウェルネスツールボックスとは?

Taking Actionの中心となる考え方の一つが「ウェルネスツールボックス」です。

これは、自分の調子を整えるために使える「道具箱」のようなもの。例えば…

  • 深呼吸や瞑想
  • 友達に電話する
  • 散歩に出かける
  • 好きな音楽を聴く
  • 日記を書く
  • お風呂にゆっくり入る

など、「自分にとって効果がある」と感じるものを集めていきます。このツールボックスは、人それぞれ違っていいのです。


アクションプランって何?

「アクションプラン(予防とリカバリーのための行動計画)」は、自分の状態に応じてどう行動するかを事前に決めておく計画です。

具体的には、以下のような内容を自分で作っていきます。

  1. いい感じの自分はどんな状態か
  2. 毎日必ずやること
  3. 状況によってやること
  4. トリガー(引き金)への対処法
  5. 注意サインへの対処法
  6. 状況が悪化した時の対処法
  7. クライシスへの対処法
  8. クライシスを乗り越えた後の計画

この計画を作っておくことで、いざという時に「何をすればいいか」が明確になり、慌てずに対処できるようになります。


Taking Actionの特徴

1. ピア(仲間)による支え合い

このプログラムは、「専門家が教える」というスタイルではなく、同じ経験を持つ仲間(ピア)と一緒に学ぶことを大切にしています。

2. 自分のペースで

セッションは週2時間が基本ですが、短くしたり、頻度を変えたりと、グループのニーズに合わせて調整できます。

3. 参加者ガイドライン

グループでは、全員が安心して参加できるよう、参加者自身でルールを決めます。これも「自己決定」の実践です。

4. 多様性への配慮

文化的背景、年齢、障害、学習スタイルなど、さまざまな違いを尊重しながら進められるよう設計されています。


自尊感情を高めるヒント

プログラムの中でも特に重要なテーマである「自尊感情」について、いくつかのヒントをご紹介します。

  • 自分をほめてあげる — あなたは素晴らしい人です
  • 楽しいことをする
  • 笑えることをする
  • 誰かのために特別なことをする
  • 自分が望んでいることを求める — あなたにはその価値があります
  • 親友が自分にしてくれるように、自分をいたわる
  • 否定的な考えを肯定的なものに変える練習をする

まとめ:あなたのリカバリーの旅を始めよう

Taking Actionは、「専門家に治してもらう」のではなく、「自分で自分を助ける力をつける」ためのプログラムです。

リカバリーは一人ひとり違う道のりです。完璧を目指す必要はありません。一歩ずつ、自分のペースで進んでいけばいいのです。

大切なのは、希望を持つこと自分を大切にすること、そして一人で抱え込まないこと

あなたのリカバリーの旅が、今日から始まります。


この記事は、SAMHSAの「Taking Action: A Mental Health Recovery Self-Help Educational Program」および関連資料をもとに作成しました。

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