クライシス
「クライシス」は、個人の心身の状態が重大な乱れを起こし、自分で状況を管理したり安全を保つのが難しくなる段階を指します。これは一時的なものである場合が多く、適切な対応とサポートを受けることで乗り越えられるものです。WRAP(元気回復行動プラン)では、クライシスに対応するための具体的な計画をあらかじめ作成することで、混乱の中でも自分らしく対処できるよう支援します。
WRAP(元気回復行動プラン)の「クライシスプラン」とは、個人が自分で作成する計画で、危機的な状況に備えるためのものです。このプランは、自己管理を助けるとともに、クライシス時に周囲のサポーターや医療関係者が適切に対応できるようサポートします。
クライシスの特徴
クライシスには以下のような特徴を感じる人がいます。
- 感情や行動の急激な変化
強い不安、絶望感、怒り、混乱、あるいは孤立感などが突然現れることがあります。 - 身体的・精神的安全の危機
自傷や自殺を考えるリスクが高まったり、身体的な安全が脅かされる場合があります。 - 日常生活の管理の困難
仕事や家事、人間関係など、通常はできることが急に困難に感じられることがあります。 - 周囲とのつながりの断絶
サポートを求めたり助けを受け入れるのが難しくなることがあります。
クライシスプランの主な内容
- いい感じのときの私について
「いい感じのときの私」は、自分が調子よく過ごしているときの具体的な姿や気持ちを明確にする項目です。
目的: 自分の健康状態の基準を示すことで、調子が悪くなったときに比較しやすくする。
例:笑顔でリラックスしている
物事に集中でき、やる気を感じる
他者との会話や活動を楽しめる - 誰かに責任をまかせなければならないことを示すサイン
自身が日常の管理や意思決定が困難になったときの兆候を明確にします。
目的: サポーターが適切に介入できるタイミングを知るため。
例:重要な約束を忘れる
食事や薬の管理ができなくなる
自分の安全を確保できなくなる - 責任をまかせたい人は誰か、まかせたくない人は誰か
緊急時に自分の代わりに意思決定をしてほしい人、または避けたい人をリスト化します。
目的: 信頼できる人に正しい役割を依頼することで安心感を得る。
記載例:まかせたい人: 家族、親友、ケア提供者、主治医(信頼関係を構築した)
まかせたくない人: 過去に信頼関係が築けなかった人 - 医療・保健・福祉関係者の連絡先と薬の情報
自身の健康状態や治療に関する情報を記載します。
目的: 緊急時に医療関係者が迅速に対応できるようにする。
記載内容:主治医、カウンセラー、薬剤師の連絡先
服用中の薬、用量、使用目的
アレルギーや過去の治療履歴 - 受けてもよい治療と受けたくない治療
好む治療法や避けたい治療法を明確にします。
目的: 自分の価値観に基づいたケアを受けられるようにする。
例:受けてもよい治療: 心理療法、特定の薬物療法
受けたくない治療: 強制的な治療、特定の薬 - 自宅・地域でのケア、一時療養プラン
緊急時に自宅または地域で必要なケアについて具体的に記載します。
目的: 安全な環境で適切な支援を受ける。
例:一時療養施設や地域ケアセンターの連絡先
家での静養のための準備(静かな環境、必要な物資など) - 入院してもよい病院と入院したくない病院
緊急時に選びたい医療施設をリスト化します。
目的: 自分に合った医療環境を確保する。
記載例:入院してもよい病院: 信頼できる病院、リカバリー重視の施設
入院したくない病院: 過去に不快な経験をした病院 - 人がしてくれると役に立つこと、人がすると余計に気分が悪くなること
自分が支援を受ける際の具体的な希望を記載します。
役に立つこと:話を聞いてもらう
優しい言葉をかけてもらう
必要な手続きや生活管理をサポートしてもらう
気分が悪くなること:判断を批判される
過度に指示される - クライシスプランに従わなくてもよくなったことを示すサイン
クライシスを脱し、自分で状況を管理できる状態になったことを示すサインを記載します。
例:食事や服薬を自己管理できる
冷静に話し合いや意思決定ができる
外出や他者との交流を楽しめる
まとめ
これらの項目は、クライシス時に適切な支援を受けながら、自分の価値観や希望を尊重してもらうための重要な要素です。クライシスプランは、困難な時期に安心感と安全を確保し、自分らしく回復への道を進むためのガイドとなります。
WRAPのクライシスプランは、誰にでも活用できるシンプルで効果的な自己管理ツールです。このプランを作成することで、予測される危機への準備を整え、困難な状況下でも可能な限り安定して行動できるようになります。
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