東京WRAP ー 自分らしいウェルネスを育てよう!

WRAP(元気回復行動プラン)とアディクションからのリカバリー

はじめに

アディクション(依存症)とは、アルコール、薬物、ギャンブル、インターネットなどへの過剰な依存が生活や人間関係に悪影響を及ぼす状態です。しかし、「リカバリーは可能」です!

WRAP(元気回復行動プラン)を活用すると、「元気な自分を取り戻すための具体的な方法」を作ることができます。WRAPは、依存症の克服だけでなく、ストレス管理や心のウェルネスにも役立つツールです。

WRAPの基本となる「五つの大切なこと」を踏まえながら、アディクションからのリカバリーにどのように活用できるかを具体例を交えて説明します。


WRAPの「五つの大切なこと」とアディクションからのリカバリー

WRAPには、リカバリーにとって重要な以下の5つの柱があります。

五つの大切なことアディクションからのリカバリーでの役割
希望(Hope)「リカバリーできる」と信じることが第一歩
主体性(Personal Responsibility)自分の行動を意識し、選択する力をつける
学ぶこと(Education)依存症やリカバリー方法を知り、対策を考える
権利擁護(Self-Advocacy)自分のリカバリーのために、必要なサポートを求める
サポート(Support)一人で頑張らず、支え合う環境を作る

①希望(Hope):リカバリーは可能!

「どんな状態からでも、リカバリーの道はある」と信じることが大切。
アディクションに苦しむと、「もう無理だ」「一生このままかも」と思いがちですが、リカバリーした人はたくさんいます!

具体例

長年アルコール依存に苦しんでいたAさんは、「どうせまた失敗する」と思っていました。しかし、WRAPを学び、「自分の目標(ウェルネス的な生活、家族との関係の修復)」を設定し、小さな成功を積み重ねることで、少しずつ希望を持てるようになりました。

実践方法

✅ 「自分が元気な状態とはどんなものか?」を紙に書く。
✅ 小さな成功体験を積み重ねる(例:1日お酒を飲まない)。
✅ リカバリーした人の話を聞き、自分にも可能だと実感する。


②主体性(Personal Responsibility):自分の行動を選ぶ

「自分の人生をコントロールできるのは自分」と理解することがリカバリーの鍵です。

具体例

ギャンブル依存だったBさんは、借金を抱え、周囲に頼っていましたが、「誰かが助けてくれるのを待つのではなく、自分が行動しなければリカバリーできない」と気づき、予算管理を始めました。

実践方法

「アディクションの引き金」をリストアップし、それを避ける工夫をする。
✅ 「自分が責任を持ってできること」を毎日ひとつ決めて実行する。
✅ 失敗しても自分を責めず、「次にどうするか」を考える。


③学ぶこと(Education):リカバリーに必要な知識を得る

「依存症とは何か?」「リカバリーするために何ができるのか?」を知ることで、適切な選択ができるようになる。

具体例

薬物依存のCさんは、「薬をやめるとストレスが増える」と思い込んでいました。しかし、WRAPを学び、ストレスを軽減する方法(運動、深呼吸、瞑想)を身につけ、薬に頼らなくてもリラックスできるようになりました。

実践方法

✅ 依存症の知識を増やすために、本を読んだり、専門家の講座を受講する。
✅ WRAPの「元気に役立つ道具箱(Wellness Toolbox)」を作り、ストレス対策の選択肢を増やす。
成功した人の体験談を読むことで、新しい視点を得る。


④権利擁護(Self-Advocacy):自分を守る力をつける

「回復する権利がある」「自分のニーズを適切に伝えることが大切」と理解する。

具体例

Dさんは、家族や職場の人から「意志が弱いから依存症になる」と言われていました。しかし、「依存症は病気であり、サポートを求めるのは当然の権利」と気づき、自助グループに参加しました。

実践方法

「助けを求める」練習をする(例:「今日は辛いので話を聞いてほしい」)。
支援団体やピアサポートに参加し、同じ経験を持つ人たちとつながる。
「自分にはリカバリーする価値がある」と言い聞かせる。


⑤サポート(Support):一人で頑張らない

「リカバリーには支えが必要」。誰かと一緒の方が、ずっと心強い。

具体例

Eさんは孤独感から薬物に頼っていましたが、WRAPを通じて、「信頼できる人に相談することの大切さ」を学び、家族や友人と少しずつ関係を修復しました。

実践方法

✅ 「信頼できる人リスト」を作成し、定期的に連絡を取る。
✅ 12ステップ、自助グループ(AA、NAなど)に参加し、同じ目標を持つ仲間とつながる。


元気に役立つ道具箱(Wellness Toolbox)
回復をサポートする「ツール」をリスト化する。

アディクションとの関連
飲酒やギャンブルの衝動が来たときに「他の選択肢」を持つことが重要。
実践例
✅ 運動、瞑想、音楽、散歩、深呼吸、趣味などのリストを作る。

日常生活管理プラン(Daily Maintenance Plan)
「毎日続けることで、安定した生活を維持するためのプラン」

アディクションとの関連
「規則正しい生活」をすることで、衝動をコントロールしやすくなる。
実践例
✅ 毎日のルーティン(例:朝の散歩、3食の食事、夜のリラックスタイム)を決める。

引き金(Triggers)
「自分の状態を悪化させる要因を把握し、それを避ける」

アディクションとの関連
「どんな状況が依存の衝動を引き起こすか?」を知る。
実践例
✅ 飲み会には行かない、ストレスを感じたらすぐにサポートを求める。

注意サイン(Early Warning Signs)
「悪化しそうな兆候を見つけ、早めに対策をとる」

アディクションとの関連
「ストレスがたまると飲みたくなる」といったパターンを知る。
実践例
✅ 「調子が悪くなる前の兆候リスト」を作り、早めに対策を取る。

深刻な乱れとは?

「深刻な乱れ」とは、通常の生活ができなくなったり、自己管理が難しくなったりする状態を指します。特にアディクション(依存症)の場合、次のようなサインが現れることがあります​。

このような状態に陥ると、自己判断が難しくなり、さらなる依存行動につながるリスクが高まります。


2. アディクションにおける深刻な乱れの例

ケース①:アルコール依存による深刻な乱れ

状況

Aさんは、仕事のストレスから毎晩お酒を飲むようになり、次第に飲酒量が増えていきました。やがて、「朝から飲む」「仕事を無断欠勤する」「飲酒運転をする」などの行動が見られるようになりました。

深刻な乱れのサイン

✅ 仕事の締め切りを守れなくなる
✅ 家族との関係が悪化する(約束を守らない)
✅ アルコールなしでは気分が落ち着かない
✅ お金の管理ができず、借金が増える
✅ 自分でも「ヤバイ」と思うが、やめられない


ケース②:ギャンブル依存による深刻な乱れ

状況

Bさんは、最初は週に1回のパチンコが楽しみでした。しかし、次第に賭け金が増え、「生活費まで使う」「嘘をついてお金を借りる」「家族や仕事を優先できなくなる」といった行動が出てきました。

深刻な乱れのサイン

✅ 借金が増え、返済が滞る
✅ 家族や友人に嘘をつく
✅ ギャンブルで負けるとイライラし、衝動的にお金を使う
✅ 仕事中もギャンブルのことばかり考えてしまう
✅ ギャンブルをやめようと決意しても、結局またやってしまう


ケース③:薬物依存による深刻な乱れ

状況

Cさんは、気分を落ち着かせるために薬を使用していましたが、次第に「使用量が増える」「仕事を失う」「家族と縁を切る」など、生活全体が崩れていきました。

深刻な乱れのサイン

✅ 自分の身なりやウェルネスを気にしなくなる
✅ 仕事や学校に行けなくなる
✅ 知らない人と関わるようになり、危険な状況に陥る
✅ 薬を手に入れるために犯罪行為に手を出す
✅ 依存をやめたい気持ちはあるが、止められない


3. WRAPを活用して深刻な乱れを防ぐ

WRAPには、深刻な乱れに対応するための具体的なステップがあります。これを活用することで、再発や悪化を防ぐことができます​。

①「深刻な乱れのサイン」をリストアップする

自分が危険な状態に陥る前に、どんな兆候があるかを知ることが大切です。例えば:

✅ 実践方法 📌 自分の深刻な乱れのサインを書き出す。
📌 それが出たときにどう対応するかを決める(例:「助けを求める」「WRAPのツールを使う」)。

クライシスプランの9つの要素

WRAPのクライシスプランには9つの重要なポイントが含まれます​。

  1. 自分がいい感じ
    • 例:「飲酒していないときは、仕事ができており、毎日運動をしている」
  2. クライシスに陥ったときのサイン
    • 例:「夜に一人でいると飲酒欲求が強くなる」「ストレスがたまるとギャンブルに手を出しそうになる」
  3. サポートをお願いしたい人・避けたい人
    • 例:「母親と友人Aには助けを求めたいが、過去に共依存だった友人Bには頼りたくない」
  4. 医療・福祉関係者の連絡先
    • 例:「カウンセラーの連絡先」「緊急時の病院の電話番号」
  5. 受け入れたい治療・避けたい治療
    • 例:「入院は避けたいが、デイケアプログラムには参加したい」
  6. 自宅や地域でのサポートプラン
    • 例:「家族が3日間、一緒にいてくれるよう依頼する」「自助グループ(AAやNA)に連絡を取る」
  7. 入院が必要な場合の選択肢
    • 例:「自分が望む治療を受けられる病院・グループホームを事前にリストアップしておく」
  8. 他者にしてほしいこと・してほしくないこと
    • 例:「説教はしないでほしいが、励ましのメッセージは欲しい」
  9. クライシスからリカバリーしつつあるサイン
    • 例:「3日間連続でアルコールを飲んでいない」「自分のために食事を作れるようになった」

クライシスプランの実践例

ケース1:アルコール依存のリカバリー

状況:Aさんは6か月間禁酒していましたが、仕事のストレスから再び飲酒してしまいました。
対応

  1. 友人に連絡し、一人にならないようにする。
  2. 事前に決めていた「飲酒欲求があるときの行動リスト」を実践(運動やカウンセラーとの面談)。
  3. アルコール依存症のサポートグループに参加し、次の行動を決める。

ケース2:ギャンブル依存のリカバリー

状況:Bさんは1年間ギャンブルをやめていましたが、給料日に衝動的にパチンコ店へ行きそうになりました。
対応

  1. 「引き金のリスト」を見直し、ギャンブル衝動のサインに気づく。
  2. 事前に決めていた「ギャンブル以外の楽しみ」(スポーツ、映画)を実行。
  3. ギャンブル依存症専門の相談窓口に電話し、冷静な判断を取り戻す。

クライシスプランの重要性


まとめ

アディクションのリカバリーには、「事前の準備と計画」が不可欠です。WRAPのクライシスプランを活用することで、「依存の衝動に飲み込まれそうなときでも、自分自身を守る手段」を持つことができます。
元気なときにクライシスプランを作り、実際に活用することで、より安定したリカバリーが可能になります。


まとめ

WRAPは、アディクションからのリカバリーにとても有効なツールです。
✔ 「五つの大切なこと」を活用し、自分に合ったリカバリープランを作る。
✔ 「クライシスプラン」を活用し、再発を防ぐ準備をする。

あなたも、自分だけの「元気回復行動プラン」を作り、「依存とつきあう人生」を手に入れてみませんか? 😊

モバイルバージョンを終了