Taking Action(テイキング・アクション)は、アメリカの公的機関であるSAMHSA(物質乱用・精神保健サービス局)が作りあげた、心のリカバリーを支える自己学習プログラムです。
このプログラムは、メアリー・エレン・コープランド博士と、多くの当事者・仲間たちが共に知恵を出し合いながら作りました。
それぞれが「自分の人生を取り戻す」ことをめざし、希望と力を育むための道しるべとなっています。
このプログラムが大切にしていること
Taking Action は、次の価値を土台としています。
- 希望(Hope)
どんなときも、良くなっていけるという信じる心を持つこと。 - 自己決定と自分が主体となること(Self-determination & Empowerment)
自分のことを自分で選び、歩む力を育てること。 - 対等性と相互尊重(Equality & Mutual Respect)
互いを尊い存在として認め合い、思いやりと敬いをもって関わること。 - 多様性の受け入れ(Diversity & Inclusion)
文化や性別、年齢、背景のちがいを超えて、一人ひとりをそのまま受けとめること。 - 力に焦点を当てる(Focus on Strengths)
足りないところではなく、すでに持っている力や知恵に目を向けること。
Taking Action では、「教える人」と「学ぶ人」に上下はありません。
ファシリテーターも参加者も、互いに学び合いながら共に進んでいく仲間です。
Taking Action の目的
Taking Action は、心の回復を自分の手の中に取り戻すことをめざします。
人が自らの力で健康とウェルネスを育み、望む生き方をつくり出す――そのための学びと実践の場です。
SAMHSAは、リカバリーを次のように示しています。
「リカバリーとは、人が自分の健康とウェルネスを高め、自分の力で人生を歩み、持てる力を十分に生かしていく変化の過程である。」
Taking Actionは、この考えに基づき、4つの柱を大切にしています。
- 健やかさ(Health)
からだとこころをいたわり、健康を支える選択をする。 - 安心できる居場所(Home)
安定した、安全な暮らしの場をもつ。 - 生きる目的(Purpose)
学び、働き、創り出す中で、自分の人生に意味を見いだす。 - つながり(Community)
支え合う人々との絆を育て、共に生きる。
プログラムの内容
Taking Action は、全24回のセッションで構成されています。
それぞれがリカバリーの一歩を学び、実践するためのテーマを持っています。
主な内容は次のとおりです。
- リカバリーと希望
- 自尊心を育てる
- 自分の声を発する(自己アドボカシー)
- 自己決定とエンパワーメント
- 仲間との支え合い(ピアサポート)
- 日々のウェルネスを保つ
- 引き金や注意サインに気づく
- クライシス後のリカバリー
- 難しさを乗り越える力
- 自分らしいウェルネスの暮らしを築く
セッションは、少人数のグループで進められます。
互いの話を聴き合い、安心して自分の考えや気づきを言葉にできる場です。
すべての参加は自発的であり、話さない選択も尊重されます。
ファシリテーターのあり方
Taking Action のファシリテーターは「指導者」ではありません。
共に学び、支え合う仲間として、場の安全と尊重を守りながらセッションを進めます。
ファシリテーターは、
- 参加者をありのままに認める
- 希望の感覚を大切にする
- だれの中にも力があることを信じる
という姿勢をもちます。
Taking Action とピアサポート
Taking Action は、ピア(同じ経験をもつ仲間)との支え合いを軸にしています。
「誰かに助けられる人」から「誰かを支えられる人」へと変わっていく過程の中で、
人は自分の力を再び感じることができます。
Shery Mead が示す**Intentional Peer Support(意図的ピアサポート)**とも深くつながり、
関係の中で共に成長し、理解し合うあり方を学びます。
日本における意義
Taking Action は、診断や治療の枠を超えて、
「生きる力」を取り戻すためのプログラムです。
日本でも、当事者や支援者、家族、地域の仲間が共に学ぶことで、
安心と希望の輪を広げていくことができます。
どんな背景の人にも、静かに寄り添いながらリカバリーの歩みを支えることができます。
参考文献
- SAMHSA(2014)Taking Action: A Mental Health Recovery Self-Help Educational Program
- SAMHSA(2012)Working Definition of Recovery
- Mary Ellen Copeland, PhD
- Shery Mead, Intentional Peer Support