はじめに
東京ウェルネス & リカバリーは、
リカバリーを「症状の消失」や「元の状態への回帰」とは捉えない。
リカバリーとは、
傷ついた経験や、揺れや、怒りや、希望の持てなさを含んだまま、
再び自分の人生を生き直していくプロセスである。
それは前向きであることを求められる道ではなく、
管理しやすくなる訓練でもなく、
社会に都合のよい人間になるための過程でもない。
東京ウェルネス & リカバリーにおける
リカバリーの定義
リカバリーとは、
人が自分の尊厳を取り戻しながら、
自分自身の状態・関係・選択を引き受け直していく、
終わりのないプロセスである。
それは、
良くなったかどうかで測られるものではなく、
揺れながらも「人として扱われ続ける関係」の中で育まれる。
リカバリーを形づくる10の柱
① 本人主導
リカバリーは、他者に導かれるものではない。
本人が迷い、拒否し、立ち止まる権利を含めて、
自分の人生のハンドルを握り直していく過程である。
「選ばされている主体性」ではなく、
選ばない自由も含めた本人主導が尊重される。
② 責任
リカバリーにおける責任とは、
無理に背負うことではなく、
今の自分の状態を見極め、
関係や支援を調整する力である。
責任は当事者一人に押し付けられるものではなく、
支援者・制度・社会と分かち合われるべきものである。
③ 多様な経路
リカバリーに正解の道筋はない。
進むこと、止まること、戻ること、距離を取ること、
すべてがリカバリーの経路になりうる。
多様性とは、
管理できない選択が現れても、
関係が切られないことである。
④ 包括性
リカバリーは、
心・体・生活・人間関係・社会的条件が
切り離されずに扱われることを必要とする。
包括性とは、
すべてを一人で抱えることではなく、
人生を分断して管理しない姿勢である。
⑤ ピアと関係性
リカバリーは、人との関係の中で起こる。
ピアとは模範や成功例ではなく、
同じように揺れ、失敗し、やり直す存在である。
関係性とは、
うまくつながることではなく、
壊れてもやり直せる余白を持つことである。
⑥ 文化・文脈
リカバリーは、文化や社会的文脈の影響を受ける。
しかしそれは、
文化に適応することを強いられることではない。
文化に合わない自分も排除されないことが、
リカバリーを支える。
⑦ トラウマ
トラウマとは過去の出来事ではなく、
安全が奪われた関係の記憶である。
リカバリーとは、
トラウマ反応を消すことではなく、
再トラウマ化されない関係の中で、
安全を学び直していく過程である。
⑧ 尊重
尊重とは、丁寧な態度のことではない。
それは、
拒否・違和感・沈黙・怒りがあっても、
主体を侵されないことである。
尊重は、
リカバリーの結果ではなく、
リカバリーが始まる条件である。
⑨ 力
力とは、成果や有用性ではない。
それは、
ここまで生き延びてきた事実そのものである。
問題とされた行動や反応の中にも、
生存のための力が宿っている。
リカバリーとは、その力を否定せず、
今の状況に合わせて使い直せるようになる過程である。
⑩ 希望
リカバリーにおける希望は、
前向きな未来像に限られない。
怒り、絶望、
「復讐したい」と思うほどの悔しさもまた、
尊厳を取り戻したいという希望の現れである。
リカバリーとは、
そうした願いを否定されずに語れる関係の中で、
他者を傷つける行為以外の選択肢を
取り戻していく過程である。
希望とは、
どんな願いを抱いても、
人として関係から排除されないという確信である。
結びに
東京ウェルネス & リカバリーが目指すのは、
人を「良くする」ことではない。
それは、
人が人として扱われ続ける場を、
社会の中につくり続けることである。
リカバリーとは、
完成する状態ではなく、
問い直し続ける関係そのものなのだから。