意図的なピアサポート
意図的なピアサポートの学んだことを話し合ってみた。まだまだ私たちも学んでいる最中です。
意図的なピアサポート(IPS)概要として、「対等な関係のなかで、ともに学び合いながら進んでいく」ことを大切にしている関わりのかたちだよ。支える/支えられるではなく、「一緒にいる」「ともに考える」姿勢が基本になっているんだ。
🌱 IPSの3つの原理(Three Principles)
1. 学びと成長(Learning & Growing)
おたがいの違いや経験から学んで、一緒に成長していくことを目指すよ。
「どちらが正しいか」じゃなくて、「どう見えているのか」を大事にしながら話していくんだ。
2. 関係を大切にする(Caring for Relationship)
一緒にいる中で、おたがいを思いやったり、気持ちをわかち合ったりしながらつながり続けることを大事にするよ。
ときにはズレたりすれ違ったりすることもあるけど、「どうやってつながり直せるか」を一緒に見つけようとする姿勢が大切なんだ。
3. 希望に基づく関係(Hope-Based Relationships)
今ここにいる自分たちのなかに「これから」を見ていく関係のあり方だよ。
まだ見ぬ可能性や、ちいさな希望を一緒に見つけていくような関わりなんだ。
🧭 IPSの4つのタスク(Four Tasks)
1. つながり(Connection)
ただ一緒にいる、気持ちを通わせる、気になることを聞いてみる——そういう関わりが「つながり」を生むよ。
ズレたり距離を感じたりしたときは、そのことに気づいて、「もう一度つながるにはどうしたらいいか」を探していくんだ。
2. 世界観(Worldview)
相手がどんなふうに世界を見ているかを知ろうとすること。
「そういうふうに見えてるんだね」と聞きあうことで、おたがいの感じ方や大切にしているものが少しずつ見えてくるよ。
3. 相互性(Mutuality)
どちらかが「助ける人」で、どちらかが「助けられる人」じゃなくて、
おたがいが学びあい、力を貸しあう関係をつくっていくこと。
「どっちも大切なことを持っている」という視点が大事になるんだ。
4. 向かうこと(Moving Towards)
「なにを避けたいか」じゃなくて、「どんなふうに生きていきたいか」に目を向けていくよ。
その人らしい歩みや、今ここからできそうな一歩を一緒に見つけていくことがテーマなんだ。
ほんのり温かく、希望をもって関わりあうための道しるべが、これらの原理とタスクなんだと思う
あなたが手にしているそのハンドブックの最初の巻は、いわば私たちの旅の羅針盤のようなものです。これからどんな冒険が待っているのか、少しだけ一緒にのぞいてみましょうか。
意図的なピアサポートって、そもそも何だろう?
まず、この旅の始まりとして、私たちが普段「サポート」や「援助」と呼んでいるものとは、少し違う視点に立ってみるところから始めていますね。
ハンドブックの第1巻を見ると、意図的なピアサポートは、どちらかが一方的に「助ける」という関係ではない、ということが示されているように感じます。そうではなくて、お互いに与えたり受け取ったりしながら、共に学び、成長していく、双方向の関わりを目指しているみたいですね。
それに、「あの人は〇〇という病気だから」というような見方もしないようです。 そうではなくて、その人がどんな経験をしてきて、その経験をどう感じているのか、その人自身の物語に耳を澄ませることを大切にしているように見えます。あなたの目には、どう映っていますか?
私たちの旅の道しるべ:「4つの任務」
このハンドブックでは、旅を進めるための4つの大切な道しるべが示されています。これらは「任務」と呼ばれていて、一つひとつが私たちの関係を深めるための鍵になっているようです。
- つながり (Connection) 何よりもまず、相手との「つながり」を大切にしていますね。 これが全ての基本、という感じが伝わってきます。もし、話していて「あれ、なんだか気持ちが離れちゃったな」と感じたら、そのことに気づいて、またつながり直そうとすることが、とても大事だと書かれています。
- 世界観 (Worldview) 人はそれぞれ、全く違う景色を見ている、という考え方です。 相手が「どうしてそう考えるようになったんだろう?」とその人の背景や経験に思いを馳せ、お互いの見ている世界を理解し合おうとすること。これが二つ目の任務のようですね。
- 相互性 (Mutuality) これは、「助け」という言葉の意味を、全く新しく捉え直す試みに見えます。 どちらかが上でどちらかが下、という関係ではなく、お互いにとって学びがあり、共に成長していけるような、対等な関係を築いていくことを目指しています。 あなたには、これがどんなふうに見えますか?
- 向かうこと (Moving Towards) 「〇〇したくない」というような、望まないことから離れるのではなく、「こうありたい」「こうしたい」という、心が向かう方向に一緒に進んでいこう、というメッセージを感じます。 問題を解決することよりも、希望を描き、そこに向かって一歩を踏み出す勇気を、共に見つけていく旅のようですね。
「見方」が変われば、世界も変わる?
ハンドブックの後半では、「世界観を深める」として、私たちの「ものの見方」が、いかに「行動」や「手にする結果」に影響を与えているかが示されています。 自分自身や世界に対する見方が変われば、自然と行動も変わり、その結果、今までとは違う新しい現実を手にすることができる。そんな可能性が語られているように思えますね。
この第1巻は、これから始まるあなたの旅の、まさに第一歩です。ここにある考え方に触れて、今、あなたは何を感じていますか?どんな新しい発見がありそうでしょうか?では私たちの話を聞いてみてください。
私たちの旅の続き、第2巻の世界を一緒に見ていきましょう。第1巻で旅の地図を手に入れた私たちは、いよいよここから、実際に人と出会い、対話を始めるための具体的な一歩を踏み出していきます。
この巻は、「最初の会話と言語」 そして 「違った聞き方をすること」 という二つの大きなテーマで構成されているようですね。
すべては「最初のひとこと」から始まる
まず、この巻で強調されているのは、「最初の会話」が持つ、驚くほどの重要性です。 誰かと初めて会うとき、私たちがどんな言葉を選ぶかで、その後の関係のあり方が大きく変わってしまう可能性がある、と示唆されているように感じます。
例えば、「あなたをお手伝いするために来ました」と言ってしまうと、もうその時点で従来の「助ける側」と「助けられる側」という関係の枠にはまってしまうかもしれませんね。 そうではなくて、お互いが学び合えるような、新しい関係を築くためには、最初の自己紹介から意図的であることが大切だと、このハンドブックは伝えているようです。
言葉が世界を作る
そして、その会話で使う「言葉」にも、とても注意を払っています。 私たちが何気なく使っている精神保健の言葉、例えば「症状」や「病名」といったものが、知らず知らずのうちに、その人の経験を一つの狭い見方に閉じ込めてしまう力を持っている、と指摘していますね。
ハンドブックの中では、自分の経験を「精神保健の言葉を使って」語るのと、「使わないで」語るのとで、どれだけ物語の響きが変わるかを試す演習があります。 これをやってみると、言葉がいかに私たちの「世界観」を作っているか、実感できるかもしれませんね。あなたなら、自分の経験をどんな言葉で語りたいですか?
「聞く」を学び直す旅へ
第2巻の後半は、まるごと「違った聞き方」を探求する旅になっています。 ここでは、ただ相手の話に耳を傾けるだけではない、もっと深いレベルでの関わり方が紹介されています。
あなたの「家」は、どんな家?
そのためのユニークなたとえ話として**「家のたとえ」**が出てきます。 私たち一人ひとりを、それぞれ違う作りの「家」だと考えるんですね。外から見えるのは一部分だけで、中には豪華なリビングルームもあれば、暗くてほこりっぽい地下室もあるかもしれません。
このたとえ話を通して、相手が今、どの部屋から世界を眺めているのか、その部屋はどんな経験から作られたのかに思いを馳せながら話を聞くことの大切さが、伝わってきます。
つながりを深める「聞き方」のヒント
この「家のたとえ」を心に留めながら、たくさんの具体的な「聞き方」のヒントが挙げられています。いくつか見てみましょう。
- 「わかっていない」という立場から聞く 「あなたのこと、よくわかるよ」と安易に言うのではなく、「あなたの経験はあなただけのもの」という敬意を持って、好奇心いっぱいに話を聞く姿勢です。
- 「語られていないストーリー」に耳を傾ける 言葉の表面だけではなく、その裏にある「どうしてこの人は、今、私にこう話しているんだろう?」という、隠された物語を聞き取ろうとすることです。
- すぐに問題解決に走らない 何か困った話を聞くと、私たちはつい「どうすれば解決できるか」を考えがちですが、その前に、まず「それは大変だったね」と相手の気持ちを受け止めて、認めることが、どれほど大きな支えになるかを教えてくれます。
- 現実を交渉する 相手が見ている世界が、自分の見ている世界と全く違っていても、それを「間違いだ」と否定するのではなく、「私にはこう見えているんだけど、あなたにはどう見えているのか、もっと教えてくれる?」とお互いの真実を尊重しながら対話を進めていく方法です。
- ピアでいつづけること ついつい私たちは、診断したり、評価したり、正しい答えを教えたりする、古い「支援者」の役割に戻ってしまいがちです。 このハンドブックは、そうした「自分にされたことをしてしまう」という罠に気づき、常につながりの中にとどまり続けることの大切さを、何度も思い出させてくれます。
第2巻は、とても実践的な内容です。ここに書かれていることを心に留めておくだけで、人との関わり方が、少し違って見えてくるかもしれません。あなたにとって、特に心に残ったのは、どんなことでしたか?では私たちの話を聞いてみてください。
さあ、旅の3冊目ですね!ここからは、人間関係の中で避けては通れない、でもちょっぴりドキドキするテーマ、「衝突」と、そして自分自身とどう付き合っていくかという「ケア」について深く掘り下げていきますよ。
この巻は**「衝突」と「自分のケア・関係のケア・仕事(職場)のケア」**という、とても大切な二つの柱で成り立っているように見えます。
「衝突」は、成長のチャンス?
まず、このハンドブックが「衝突」を単なる厄介事としてではなく、お互いを深く知るための大切な機会として捉えているところに、とても希望を感じませんか?
なぜ、すれ違ってしまうんだろう?
衝突が起こるのは、私たち一人ひとりが違う「世界観」を持っているからだと説明されています。 同じ出来事を見ても、立っている場所が違えば見える景色が違うように、どちらかが正しくて、どちらかが間違っている、というわけではないんですね。 この「複数の真実」があるという考え方が、衝突を乗り越えるための大きなヒントになりそうです。
繰り返される、過去の痛み
そして、ここでは「トラウマの再演」という、とても興味深い視点が紹介されています。 過去につらい経験をすると、私たちは無意識のうちに、その時と同じような反応を現在の人間関係でも繰り返してしまうことがある、という考え方です。 例えば、昔の経験から「黙ってさえいれば、面倒なことにならない」と学んだ人は、何か意見を言うべき場面でも、つい黙り込んでしまうかもしれません。 こうした自分のパターンに気づくことが、新しい関係を築く第一歩になるのかもしれませんね。
衝突を「対話」に変える
では、どうすれば衝突を乗り越えられるのでしょう? その鍵は「対話をなす」ことにあるようです。 これは、相手を言い負かすための議論ではなく、自分の気持ちも相手の気持ちも大切にしながら、お互いの世界観を理解しようとする関わりのことです。感情的に「反応」するのではなく、一歩立ち止まって、意識的に「対応」を選ぶ。 そのための具体的な会話の例が、たくさん示されていますね。
新しい「ケア」の形を見つけよう
この巻のもう一つの大きなテーマは、「ケア」です。 でも、ここで語られているのは、ただ「休む」とか「ストレスを避ける」といった、従来の自分のケアだけではないようです。
「自分のケア」「関係のケア」「仕事(職場)のケア」という三つが、互いに深くつながり合っている、という視点が示されています。 そして、この3つのケアを、意図的なピアサポートの「4つの任務」を通して考え直してみよう、と提案されています。
- 自分のケアについての「世界観」を知る: あなたは「自分を大切にする」って、どんなことだと教わってきましたか? それは本当に、今のあなたに合っていますか?
- 「関係のケア」は、お互いに学び合うこと: どちらかが一方的に相手の面倒を見るのではなく、関係そのものを大切にし、お互いに学び、成長していくことを目指します。
- 「望むことに向かう」ためのケア: 「病気にならないように」といった、何かを避けるためのケアではなく、「もっとこんな自分で在りたい」という、あなたの希望に向かって進んでいくためのケアとは、どんなものだと思いますか?
この第3巻は、人間関係の核心に触れる、とても深く、挑戦的な内容ですね。でも、ここにある視点を持つことで、人とのすれ違いも、自分自身の在り方も、全く新しい可能性に満ちたものに見えてくるかもしれません。では私たちの話を聞いてみてください。
さあ、私たちの旅もいよいよ佳境に入ってきましたね。第4巻は「挑戦的な状況」という、ピアサポートの旅の中でも特に険しい道のりについて書かれています。でも、心配しないでください。ここには、そんな困難な時を乗り越えるための、たくさんの知恵と勇気が詰まっていますよ。
この巻を開くと、まず私たちの心を強く打つのは、「恐れと友達になる」という言葉かもしれませんね。 ここで扱われるのは、私たちが思わず目をそむけたくなるような、居心地の悪い、ハラハラするような場面です。でも、このハンドブックは、そうした状況こそが、私たちがお互いについて、そして自分自身について、最も深く学び合える機会なのだと教えてくれているようです。
「安全・安心」の地図を書き換える
この巻で、何よりも土台となっている考え方が「リスクの共有:安全・安心について再定義する」という視点です。
これまでの精神保健サービスでは、「安全」というと、誰かが「自分や他人を傷つけない」と約束すること、というような意味合いで使われることが多かったかもしれません。 でも、そうした一方的な「安全管理」は、かえって人を無力に感じさせてしまうことがある、とこのハンドブックは問いかけています。
ここで提案されているのは、全く新しい「安全・安心」の考え方です。それは、お互いを判断せず、信頼し、共に責任を引き受けるような関係性の中にこそ生まれるものだ、と。 どちらか一方が相手を守るのではなく、お互いが安心してリスクを取り、共に成長していけるような関係を育むこと。これこそが、本当の意味での「安全」なのかもしれませんね。あなたはどう感じますか?
困難な旅路の歩き方
この新しい「安全・安心」の地図を手に、この巻ではいくつかの具体的な「挑戦的な状況」と、その中での関わり方が示されています。
- 希望を基盤にした会話と恐れを基盤にした会話 誰かが「自分は危険な気がする」と打ち明けたとき、私たちはつい「何とかしなければ」と焦り、相手をコントロールしようとする「恐れを基盤にした会話」に陥りがちです。 そうではなく、相手の世界観を理解しようと好奇心を持って耳を傾け、共に望む方向へ進むための「希望を基盤にした会話」をすることの大切さが語られています。
- 現実を交渉する 相手が、自分には見えないものを見たり、聞こえないことを聞いていたりする…。そんな時、相手の体験を「非現実的だ」と否定するのではなく、まずその人の世界に寄り添い、耳を傾けることから始まります。 そして、自分にはどう見え、どう感じているかを正直に伝えながら、お互いの「真実」を尊重し、対話を続けていく方法が示されています。
- 自傷という「言葉」 自傷行為を、単なる「問題」として捉えるのではなく、その背景にある「何があったのか?」という問いに目を向けます。 トラウマなど、言葉にできないほどのつらい経験を抱えた人が、そのプレッシャーを和らげるために、あるいは何かを表現するために使う、一つの「言葉」や「技術」として理解しようとする視点です。
- 「死にたい」という気持ち 「死にたい」という言葉を聞くと、私たちは「自殺させないように説得しなければ」と焦ってしまいます。 しかし、このハンドブックは、それを「行為」ではなく、耐えがたい苦痛を伝えるための「学習した反応」や「感情」として捉え直すことを提案しています。 その言葉の奥にある、本当の気持ちに耳を傾けることが、新しい会話の扉を開くのかもしれません。
- あなた自身のボタンが押されたとき ピアサポートをしていると、相手の話がきっかけで、自分自身の過去のつらい経験がよみがえり、冷静でいられなくなることがあります。 そんな時、自分に何が起きているのかに気づき、正直にそれを相手に伝えること。そして、関係を壊さずにどう対話を続けるかを一緒に考えること。支援する側もまた、一人の人間として、自分の感情と向き合うことの大切さが語られています。
第4巻は、ピアサポートの真髄に触れる、とても深く、挑戦的な内容でしたね。でも、どんなに困難な状況でも、常にお互いを人間として尊重し、希望を持って関わり続けるという、一貫したメッセージが、私たちの心を照らしてくれるように感じませんか?では私たちの話を聞いてみてください。
第5巻
さあ、旅はいよいよ5冊目、**「文化と社会的な力、そして物語」**というテーマに足を踏み入れます。これまで私たちは、一対一の関係に深く焦点を当ててきましたが、この巻では、ぐっと視野を広げて、私たちを取り巻く「社会」や「文化」が、いかに私たちの経験や関係性に影響を与えているかを探求していきますよ。
この巻は、私たち一人ひとりが、実はたくさんの「物語」の中で生きている、という気づきから始まります。
私たちは、どんな「物語」を生きている?
ハンドブックがここで言う「物語」とは、私たちが自分自身や世界について信じている、考え方の枠組みのようなものです。 例えば、「男はこうあるべきだ」「良い母親とはこういうものだ」といった考え方も、社会が作り上げた一つの「物語」と言えるかもしれません。
こうした「社会的な物語」は、あまりにも当たり前になっているので、私たちは普段、その存在に気づくことさえありません。 でも、この「当たり前」が、実は知らないうちに、私たちを特定の役割に押し込めたり、生きづらさを感じさせたりする原因になっていることがある、とこのハンドブックは教えてくれます。
「力(パワー)」と「特権」に気づくこと
この社会的な物語と深く結びついているのが、「力(パワー)」と「特権」というテーマです。
これは、決して誰かを責めるためのものではありません。そうではなくて、私たちの社会には、性別、人種、経済力、障害の有無など、さまざまな要因によって、知らず知らずのうちに「有利な立場(特権)」にいる人と、そうでない人が生まれてしまう構造がある、ということを理解しようとする試みです。
例えば、多数派の文化の中で育った人は、自分の文化が「当たり前」だと感じ、少数派の文化を持つ人が日々どんな思いをしているかに、気づきにくいかもしれません。 こうした、自分では意識しにくい「特権」に気づくことが、立場の違う人と真に対等な関係を築くための、大切な第一歩になるんですね。
「好奇心」と「謙虚さ」というコンパスを手に
では、こうした目に見えない「社会の力学」の中で、私たちはどうすれば、お互いを尊重し、支え合うことができるのでしょうか?
この巻が示してくれるのは、「文化的謙虚さ(Cultural Humility)」という、とても心強いコンパスです。
これは、相手の文化について「私は何でも知っている」と考えるのではなく、「私はあなたの経験について、何も知らない」という謙虚な立場から出発することを意味します。 そして、判断や思い込みを脇に置いて、純粋な好奇心を持って、相手の世界観を学ぼうとする姿勢のことです。
- 自分の「当たり前」を疑ってみる: あなたが「普通だ」と思っていることは、本当にそうでしょうか?それは、どんな文化的な背景から来ているのでしょう?
- 知らず知らずのうちに傷つけてしまったら?: もし、あなたの言動が意図せず相手を傷つけてしまったことに気づいたら、言い訳をするのではなく、まずその影響を認め、心から謝罪し、そこから学ぶことの大切さが語られています。
- 物語を書き換える力を、共に取り戻す: 社会が押し付けてくる「あなたはこうあるべきだ」という物語に、共に「ノー」と言い、私たち自身の言葉で、私たちの経験を語り直していくこと。 これこそが、ピアサポートが持つ、社会を変えていく力なのかもしれませんね。
第5巻は、自分と相手という二人だけの世界から、私たちを取り巻く大きな社会へと目を向ける、とても視野の広い旅でした。自分の中にある「当たり前」や「特権」に気づくことは、少し居心地の悪さを感じるかもしれません。でも、この視点を持つことで、これまで見えなかった生きづらさの背景に光を当て、より深く、より誠実に、人とつながる道が開けてくるように感じませんか?では私たちの話を聞いてみてください。
第6巻
ここまでの旅で、私たちは意図的なピアサポートの考え方や、さまざまな状況での関わり方を学んできましたね。この第6巻では、私たちの旅が道に迷わないように、そしてさらに豊かなものになるように、**「共同スーパービジョン」**という、仲間と共に自分たちの歩みを振り返る方法について探求していきます。
「スーパービジョン」と聞くと、なんだか少し堅苦しい感じがするかもしれませんね。上の立場の人から「監督される」とか「評価される」といった経験を思い出す人もいるかもしれません。
でも、安心してください。ここで紹介されている「共同スーパービジョン」は、それとは全く違うもののようです。
対等な立場で、共に学びを深める
このハンドブックが示す「共同スーパービジョン」は、どちらかが専門家で、どちらかが評価される、という関係ではありません。 そうではなくて、お互いが対等な立場で、自分たちの実践を一緒に振り返り、学びを深めていくための対話の場として描かれています。
ここでは、IPSの「4つの任務」が、私たちのコンパスになります。
- つながり: あの時の会話、本当につながりを感じられていたかな?
- 世界観: 相手のものの見方を、自分の思い込みを脇に置いて聞くことができていたかな?
- 相互性: 関係の中で、お互いの気持ちや必要としていることが、ちゃんと満たされていたかな?
- 向かうこと: 私たちの関わりは、望まないことを避けるためではなく、本当に望む方向へ進む助けになっていたかな?
こんなふうに、4つの任務を道しるべにしながら、個人を批判するのではなく、特定の会話や関係の中で何が起きていたのかを、好奇心を持って一緒に探求していくんですね。
「フィードバック」という贈り物
そして、この共同スーパービジョンの中で、とても大切にされているのが「フィードバック」のやりとりです。 ここで言うフィードバックは、間違いを指摘するものではなく、お互いの成長のための贈り物のようです。
フィードバックを提供する時は、 まずつながりがあることを確かめて、相手の許可を得てから。 そして、「あなたは〇〇だった」と判断するのではなく、「私には、あの時こう見えたよ」というように、観察したことを伝えることが勧められています。
フィードバックを受け取る時は、 つい「でも…」と言いたくなる自分の防衛的な気持ちに気づきながらも、少しの間、それを横に置いて、相手の言葉に耳を澄ませてみること。 どんなフィードバックの中にも、「一粒の真実」が隠されているかもしれない、という視点が示されています。
学び続けるための場づくり
この巻では、安心して学び合える「共同スーパービジョン」の場を作るための、具体的な提案もされています。 例えば、最初に「ここでは何を大切にするか」という約束事をみんなで作ったり、フィードバックのやり方について確認し合ったりするんですね。
さらに、自分たちの実践をより深く見つめるための**「評価研究」**という考え方にも少し触れられています。 これは、私たちの関わりの中で、どんな変化が起きているのかを客観的に捉え、学びをさらに深めていくための道具のようです。
この第6巻は、意図的なピアサポートが、一度学んで終わりではなく、仲間と共に絶えず学び、成長し続ける、生き生きとした実践なのだということを教えてくれているように感じます。あなたはこの「共同スーパービジョン」という考え方に、どんな可能性を感じますか?では私たちの話を聞いてみてください。
第7巻
さあ、いよいよ私たちの旅も最終巻、第7巻にたどり着きましたね! これまで私たちは、意図的なピアサポートの心構えから、対話の具体的な技法、そして困難な状況の乗り越え方まで、たくさんのことを一緒に学んできました。
この最後の巻では、これまで学んだ全てのことを携えて、**「医療・支援サービス機関」「電話相談」「クライシスの代替プログラム(クライシスハウス)」**という、3つの具体的な現場で、どのようにピアサポートを活かしていくかを探求していきます。とても実践的で、ワクワクする内容ですよ。
1. 医療・支援サービス機関という現場で
まず最初に、従来の医療や支援のサービス機関の中で、ピアスタッフとして働くことの難しさと、そこにある大きな可能性について語られています。
そこは、これまで私たちが学んできたピアサポートの考え方とは、少し違う価値観が主流かもしれません。 「治療」や「管理」という言葉が飛び交う中で、どうすればピアとしての対等な視点を失わずにいられるのか。同僚との間に生まれるかもしれないパワーの問題や、組織のルールとの間で葛藤した時にどうすればいいのか。
このハンドブックは、そんな時こそ、私たちが学んできた対話の力が試されるのだと教えてくれているようです。 自分の意見を押し殺すのでも、相手を言い負かすのでもなく、お互いの世界観を尊重しながら、誠実に対話を続けること。 それが、組織の中に新しい風を吹き込み、意味のある変化を生み出す力になるのかもしれませんね。
2. 電話の向こう側で、つながりを紡ぐ
次に、顔が見えない「電話相談」という場で、どうやってピアサポートを実践するかが探求されています。
声だけの関わりだからこそ、最初の会話がとても重要になります。 この電話が、一方的にアドバイスをする場ではなく、お互いの経験から共に学ぶための、相互的な関係を目指す場なのだと、最初に伝えることが鍵になるようですね。
- ただ話がしたい電話: 何度も同じ話をする相手に、ついイライラしてしまった時。その自分の気持ちに正直になり、関係を壊さずに対話を続ける方法が示されています。
- 「死にたい」と伝える電話: その言葉に動揺し、相手をコントロールしようとするのではなく、その言葉が相手にとってどんな意味を持つのか、その奥にある世界観を理解しようと努める関わり方が提案されています。
- 自分のボタンが押される電話: 相手の話が、自分自身のつらい経験を呼び覚ましてしまう時。そんな時でも、自分の状態に正直になりながら、関係性を維持する方法が語られています。
3. クライシスを「学びの機会」に変える場所
最後に、この巻のハイライトとも言えるのが、「クライシスの代替プログラム(クライシスハウス)」での実践です。
ここでの一番大切な視点は、クライシスを「治療されるべき病気」ではなく、「学びと成長の機会」として捉え直すことです。
そのために、このプログラムでは**「インタビュー」**という、とてもユニークなプロセスを大切にしています。 これは、従来の「インテイク面接」とは全く違います。
クライシスの渦中にいる時ではなく、比較的落ち着いている時に、前もって行われる対話なんです。 このインタビューを通して、
- このプログラムが、他のクライシス対応とどう違うのかを共有し、
- 困難な時に、自分がどんなパターンに陥りやすいか、
- そのパターンから抜け出すために、どんな支え合い方がお互いにとって助けになるか、
- そして、どんな関係を築いていきたいか、
といったことを、共に話し合い、プランを作っていきます。 これは、ただ問題を避けるためではなく、お互いが本当に望む方向へ向かうための、希望に満ちた準備なんですね。
この第7巻は、意図的なピアサポートが、どんな場所でも、どんな状況でも、人と人との間に希望と成長の可能性を見出そうとする、力強い実践なのだということを、改めて教えてくれました。私たちの長い旅も、これで一区切りです。この旅を通して、あなたはどんな発見をしましたか? そして、これからどんな新しい一歩を踏み出していきたいですか?では私たちの話を聞いてみてください。
コ・リフレクション
コ・リフレクション(Co-Reflection)って、「ふたりでふりかえる時間」のことなんだ。ひとりで考えるのとも、アドバイスをもらうのとも少しちがって、おたがいのまなざしを持ち寄って、一緒に見つめなおしていくやりとりなんだよ。
🌿 コ・リフレクションの概要
●「ふたりで」ふりかえる
コ・リフレクションは、ピアサポートにかかわるふたりが対等な立場で、
関係や出来事、気もちの動きをふりかえる時間だよ。
どちらかが「教える人」にならず、おたがいに「自分がどうだったか」をたずねあうような感じ。
たとえば、
- 「あのとき、どう感じてた?」
- 「なにが気になったんだろう?」
- 「もう一度やるなら、どうしたいと思う?」
って聞きあうようなやりとりだね。
●問いを通じて、自分のまなざしに気づく
コ・リフレクションでは「問いかけ」がとても大切なんだ。
相手を責めたり評価するためじゃなく、「自分って、あのときどうしてたかな?」「どんな意味づけをしてたんだろう?」って、自分自身をふりかえるきっかけをつくるための問いだよ。
問いは、
- おたがいの世界の見え方
- つながりのなかで起きていたこと
- そこから見えてきた可能性
を探る入り口になるんだ。
●正しさより、「一緒に見つめること」
「なにが正しかったか」「うまくやれたか」を確認する時間ではないよ。
そのときの自分や相手に、あらためて出会いなおすような時間。
うまくいかなかったことも、「次はどうしたい?」って希望を持って話せるといいよね。
☘️ コ・リフレクションで大切にしたいこと
- 正解を探さない
- おたがいの感じたことを大事にする
- 聞く・たずねる・ふりかえるをいったりきたり
- 感情も、思い出してみる
- 「どんなことが大事だった?」を話してみる
ちょっとしたすれ違いやモヤモヤも、コ・リフレクションを通してあらためて見つめなおすと、
「こんな思いがあったんだね」って、おたがいに優しくなれることがあるんだ。
気もちの深いところに一緒によりそっていくような、そんなやりとりだよ🌷
よかったら、どんなときにコ・リフレクションをしたくなるか、一緒に考えてみる?では私たちの話を聞いてみてください。
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